この記事は、2015年にキリスト新聞で1年間した「スキルアップ講座 教会の情報発信術」を、さらに修正を加えて2016年度版として公開するものです。キリスト新聞はキリスト教界の最新情報を毎週まさに新聞という形で届けてくれ、たいへんためになる情報も盛りだくさんです。このような機会を与えてくださったキリスト新聞社のみなさまに感謝します。全42回です。
ホームページへの幻想
「インターネット元年」と言われた1995年から20年が過ぎ、今や多くの人がインターネットを使うようになりました。レストランに行く前に、旅行に出かける前に、病院にかかる前に、そして教会に行く前に、まずはインターネットで調べるというのが当たり前の時代です。この時代の波に乗り遅れまいとホームページを持つ教会もずいぶんと増えました。今まさにホームページを作ろうとしている教会も少なくないのではないでしょうか。
私はこの20年、ホームページ制作に関わる仕事をしてきました。20年前は「ホームページを作れば儲かる」というような幻想を抱いていた人も多かったです。しかし、作れば儲かるわけではないことが分かってきました。多額のコストをかけて、アニメーションもついたカッコいいデザインのホームページを作ったのに、全然儲からない。問い合わせなどの反応すらない。そういうケースはよくありました。
そういうホームページの多くは、社長の顔と挨拶から始まり、いかに素晴らしいビジネスを展開し、良い商品・サービスを提供しているかをアピールするものでした。それらをカッコいい動きのあるデザインで見せるものでした。
これらの最大の失敗は、知名度のない中小企業が大企業と同じようなホームページを作っていたことにあります。大企業が大事なことはイメージアップ。しかし、知名度のない企業が最初にしなければならないことは「信頼を得ること」です。信頼のない企業がどれだけカッコいいホームページを作ってもそれは自己満足。売上アップにつながらなるわけがありません。顧客の立場に立って、顧客が聞きたいことが中心に書かれているホームページが必要だったのです。
まず大事なのは信頼を得ること!
教会のホームページにも同じことが言えます。一番大事なことはイメージアップではありません。まずは信頼を得ることです。関係を作ることです。
それにはどうすればよいでしょう。教会がどういう人によって運営されていて、中で行われていることが、はっきりと見えることです。初めて教会に来ようとしている人たちへの配慮が十二分に感じられることです。愛を伝える教会のホームページこそ、愛がなければならないのです。
みなさんの教会のホームページはどうでしょうか。「私たちは歴史のある教会です」「私たちは賛美が豊かな教会です」「牧師はこんなすごい経歴の持ち主です」そんな教会自慢になっていませんか。そして「あなたもイエス様を信じて救われて、天国へ行ってください!」 もう、これは押し売りと同じです。
まったくキリスト教に興味のない人が、教会のホームページを見にくることはほとんどありません。何らかのきっかけがあって、教会のホームページを見ています。ちょっと教会の外から教会の中を覗いている感じです。そこへ出て行って「さあ、うちの教会へどうぞ!」とやるのは、今の時代、逆に嫌われてしまいます。
「初めてだけど、いきなりいっても大丈夫かな」「服装はカジュアルなものじゃダメかな」「駐車場はあるんだろうか」「勧誘されたりしないかな」「教会に電話してもいいのかな」「礼拝と祈祷会ってなにが違うのかな。祈祷会は行ってもいいのかな」 そういうことこそ、読み手が気にしている部分です。
「ご不安な方はお気軽にお電話ください」とか「聖書や賛美歌はすべてお貸しますので、手ぶらでお越しください」「駐車場があるので初めての方でもお車でお気軽にお越しください」といった一言が、読み手の心を楽にし、教会への垣根が少しずつ下げてくれます。
いますでにホームページをお持ちのみなさん、一番大事なのは、さらにカッコいいデザインに作り変えることではありません。読み手にどれだけ寄り添ったホームページにできるか。そこに注目して頂きたいのです。愛を伝える教会のホームページこそ、愛が必要なのです。